(ドストエフスキー、ペテルスブルク、セメノフ広場、1849年12月22日) あの瞬間の彼自身が 千数百年の昔に十字架につけられた あの彼であったこと、 そして彼自身もあの彼のように 死の熱い接吻を受けてからは 生を悩みのために愛さなければならないことが解った — 兵士らが彼を柱から引きはなした 彼の顔はあおざめて 死人のようだった つきとばされて 彼はふたたび列の中へ押しもどされた 彼の眼ざしは 異様であり まったく自分の心の底へむけられていた そして彼のけいれんしてわななくくちびるには カラマーゾフ的な黄いろい笑いがうかんでいた
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